針葉樹とともに歩む、地域大工のものづくり

古来より地域の家を建築することを生業にしてきた大工さんや地域工務店は、杉やヒノキをはじめ針葉樹に慣れ親しんできた。理由は2つあると考えられる。

1つ目は、「やわらかくて、まっすぐ」である。
「やわらかさ」は物理的なやわらかさと、感情的なやわらかさ、どちらもである。物理的なやわらかさは、大工の加工や仕事を容易にし生産性を高めてくれた。またやわらかいと言うことは質量としても軽いこととなり、多くの資材を用する建築の加工や物流において大きなメリットであった。

杉やパイン材の無垢材の床は、夏はべたつかず、冬はあたたかく心地が良い


感情的なやわらかさという点では、私たち日本人特有の特別な感情も含んだ、木への愛情であり、心情である。見て、触って、匂いで木のやわらかさを感じ、ほっとリラックスできたり、心地の良さを感じるなど、感情の豊かさがそこにはあるのではないだろうか。
そして、針葉樹は早く育つからやわらかい。早く育つから素材として育てやすい。まっすぐだから、建物の柱や梁にも使いやすい。
針葉樹は、日本の家づくりに欠かすことのできない木材である。

2つ目は、「地域」である。
古くから杉やヒノキは地域の建築用材として育てられ、管理され、活用されてきた。それはまさに地産地消である。

和歌山の紀州産材を育成する森(写真:山長商店)

国内のそれぞれの地域に針葉樹を供給する産地が形成され、そのことが安定的な供給と価格を実現させた。またやわらかい材料であるからこそ、地域の気候風土の中で育ち、その地域で使用することがソリや割れを最小限にとどめる上でも大事であった。針葉樹を利用する地域での建築は、今で言う地域経済、地域循環そのものであり、現在でもそれを体現し続けている。

広葉樹を余すことなく使い、その魅力を家具に宿す

広葉樹は針葉樹に比べて「かたい」という特色を持つ。
じっくりと時間をかけて育つので、目が詰まってかたくなり、長く使える丈夫な家具の素材になる。そのかたさによって手仕事では加工が難しく、精密な機械で加工する必要があるが、一方で傷がつきにくいという強みを持ち、もし傷がついた場合でも容易にメンテナンスが可能である。

現在家具の素材に用いられる広葉樹はアメリカ産が主で、ウォールナット、オーク、チェリー、アッシュなどがある。アメリカ材が多い理由としては、安定供給が可能であり、素材の色や木目の違う材種が多いことが挙げられる。材種により、色合いや木目もそれぞれで異なる表情を見せる。高級感やスッキリした上品さ、木の荒々しさを表現することができるのも広葉樹ならではの魅力で、同じ材であっても、板目と柾目ではまた違った表情を醸し出してくれる。


本展に参加する若葉家具でも、環境保全に配慮したアメリカ広葉樹を使用している。
きっかけは、アメリカの広大な広葉樹林から毎年製材される大量の材料の中で、いいところばかりが先に売れてしまい、例えば節のあるような部分ばかりが大量に売れ残ってしまっていた状況から『その部分をなんとか利用する方法はないか』という話がはじまった。「アメリカ広葉樹輸出協会」が中心となって、『節のある広葉樹を価格を抑えて流通させるから積極的に使ってほしい』という活動が行われ、その流れの中から、インテリアデザイナーの関洋さんと家具デザイナーの小泉さんと、広島の府中市と福岡の大川市の複数のメーカーが協働してアメリカ広葉樹を用いたオリジナル家具ブランド「kitoki」が生まれることになった。

●kitoki
生活の『どうぐ』
身近な『かぐ』
暮しの『よはく』
http://kitoki.jp/