「大工の家具づくり×家具屋の家づくり」展の計画がはじまる2年前のこと。
わざわ座の座衆である小林建設さん(本社:埼玉県本庄市)が、新しく建築するモデルハウスで小泉さんがデザインした家具を採用することになり、その家具を製造する広島県府中市の家具メーカー「若葉家具」を訪ねることになり、小泉さんにお声がけをいただき、わざわ座メンバーも視察に伺いました。
(記事出典:わざわ座)
『木の家具が生まれる現場へ』
2017年8月31日、広島は福山へ。 東京から新幹線とレンタカーで約6時間、福山にある「若葉家具」の家具製造工場に到着しました。家具デザイナーの小泉誠さんと同社をふくめて4つの会社でつくるブランド「kitoki」の家具もここから生まれています。 大工とデザイナー、工務店が協働する「わざわ座」の活動のこれからの展開として、家具や生活道具のメーカーやお店と工務店の協働を目指していく中で、埼玉・群馬を拠点に家づくりをする「小林建設」と「相羽建設」の二社で、若葉家具さんの家具工場やお店を視察し、同社と家具デザイナーの小泉誠さんのものづくりを拝見することが今回の旅の目的です。
「kitoki」は、家具づくりの伝統と高い技術力で知られる広島県府中と福岡県大川の家具製造会社4社が、二人のデザイナー小泉誠さん、関洋さんと共同で企画・製造を行うエコ・デザイン・ファニチャー・プロジェクト。 “節”や“割れ”のある部材を、自然が描き出したユニークな個性ととらえて無駄なく有効に活用し、永く使い続けていくことのできる家具として製造されています。
同社代表の井上隆雄さん。わざわ座の活動を前向きに応援してくださっています。ちょうどこの日は小泉さんも前入りして同社と新作家具の打ち合わせをされていました。実は若葉家具さんの家具工場ではまだまだ視察の受け入れを行っていなかったそうですが、わざわ座の工務店との協働を見据えて、今回の視察が実現しました。
もとは“箱もの”家具の製造から
広島県府中市ではぐくまれてきた「府中家具」は、箪笥(たんす)などのいわゆる「箱もの家具」が中心でした。若葉家具さんの工場でも、日本の家の伝統的な家具である箪笥や仏壇などが製造の中心だったところから、約10年ほど前から、小泉さんとの「kitoki」のものづくりがはじまる中で、「脚もの家具」と呼ばれる椅子やテーブルの製造に挑戦してきたそうです。(家具ブランドとしての取り組みを同社が小泉さんに依頼した当初は、なかなか信用してもらえずに何度か顔を合わせて意見交換をする中で取り組みがはじまったというエピソードも……)
家具工場で見る製造の様子
わざわ座の家具をふくめて、普段は工務店の家づくりのための木材加工を行う工場や機械を見る機会はあるものの、家具工場を訪ねてそこで働く職人さんの仕事や機械加工を視察することはあまりありません。 今回は若葉家具さんや「kitoki」の家具を伝えるために、工務店でもショールームでの接客や広報の仕事に携わるメンバーも参加して、家具づくりの裏側を知り、そこで大切にされている姿勢や想いを学んでいきます。
小泉さんが一番伝えたかったこと
工場の中ではたくさんの機械があり、そこでの加工の様子を順序を追って見ることができました。椅子の脚部となるパーツを加工する工程では、職人さんが木材のパーツをダボと接着剤でつなぎながら、それを機械にセットして加工が進んで行く様子や、細かな削る加工を行える機械の動きを一つひとつ見せていただきました。
箱もの家具をつくってきた工場で、いかに知恵をしぼり工夫しながら脚もの家具もつくれる環境へ転換してきたのか。新しい機械を導入して仕事を進化させていくだけでなく、箱もの家具の中で「つくらないもの」「やめること」を決めて、加工場の作業スペースも役割や機能の転換を年を経て見直し変化させてきたのだそうです。
「家具づくりの現場を見てもらうことも大切だけど、実はその変化のプロセスを知ってもらうことが、今回の視察で一番大事なところなんですよ」と小泉さん。 伝統として培ってきた技術や家具づくりの拠点を活かしながらも、時代の要請に合わせてものづくりのかたちを変えていくことにチャレンジすること。
事業の内容は違えど、家具づくりの現場で起こっていることは、地域の家づくりや住宅業界の仕事に携わる僕たちにもつながる、大切な姿勢や意識と言えるものです。
<リンク>
若葉家具 https://wakabakagu.com
kitokiブランドサイト http://www.kitoki.jp
Koizumi Studio http://www.koizumi-studio.jp
(文責:わざわ座事務局)
※こちらの記事は2017年9月のものを転載したものです。